宮側町 秩父<この街に生きる
2006年6月8日 読売新聞を抜粋編集
秩父鉄道秩父駅から西へ延びるリゾート通り(県道208号)と、みやのかわ大通り(国道299号)が交差する一帯が〈宮側町〉だ。町名の通り、秩父神社に隣接し、かつては「宮ノ側」と表記した。大通りには、既に閉館したものの、東京・浅草国際劇場を模した映画館が偉容をとどめ、往時のにぎわいをうかがわせる。
宮側町は、商店街の活性化を狙ったナイトバザール(夜市)の発祥の地でもある。1987年10月に始まり、以後、毎月第3土曜日に一度も休まずに継続。この5月で223回を数えた。「皆、きまじめで真剣なんですよ。良い伝統ですね」と、ギフト・陶器「きのじや」の5代目込田孝男さん(60)は誇らし気だ。
各店の企画セールだけでなく、毎回、大人も子供も楽しめるゲームが三つあり、一晩に4万人を集めたこともある。全国からの視察もひっきりなしで、一度に800人を超す商店街役員らがやって来たこともあった。
この継続の秘訣(ひけつ)を、みやのかわ商店街振興組合の理事長で「清水金物」3代目の島田憲一さん(55)は「どんなに好評でも、同じイベントは二度とやらない。だから飽きられないんですよ」と説明する。
地道に続けてきたことで、今ではすっかり秩父の名物になり、同商店街は先ごろ、全国の「がんばる商店街77選」に選ばれた。街路灯整備の補助金など行政の支援も得られ、「まちづくりにもつながった」(島田さん)。このガス灯風の街路灯は今、東京から31年前に嫁いできた妻良江さん(55)が「日が暮れると真っ暗闇だった」と言う、みやのかわ大通りをこうこうと照らしている。
この街には、色々なストーリーが詰まっている。