2010年2月8日月曜日

カエデ(大滝地区)」 秩父<この街に生きる

カエデ(大滝地区)」 秩父<この街に生きる
2006年6月20日 読売新聞を抜粋編集

秩父にとって〈カエデ〉は特別な木だ。2005年4月に合併した新市では「市の木」に指定された。紅葉の名所として知られる大滝地区(旧大滝村)では自生するカエデの保護のほか、地区住民が自主的にカエデの植樹に取り組む。

秩父湖付近の県道沿いには、1995年ごろから600本以上を植樹。

「大滝の紅葉は素晴らしい。これを売り物にしない理由はない」。そう意気込むのは、合併まで大滝村長を務めた市収入役の山口民弥さん(55)。03年から建設が始まった滝沢ダムで、湖底に沈む地域から国道140号沿いにカエデを移植した。

5月20日、群馬県境に近い中津川の山吹沢。杉やヒノキを伐採した県有地林に、ブナやミズナラを植林する県民約60人とともに、市民団体「カエデの森づくり推進協議会」(町田啓介会長)の会員も、カエデ210本を斜面に植えた。

冷温帯気候に属する秩父地域には、国内に自生するカエデ約25種類のほぼすべてが自生している。町田会長(53)らは、カエデを使った町おこしを思いたった。花粉症の原因となる杉を減らしてカエデを植えれば、観光にも役立つ。

04年2月、菓子店経営者らは山に入り、カエデの幹から透明でかすかに甘みのある樹液約60キロを採取した。樹液を50分の1に煮詰め、秩父産の上品な甘みのメープルシロップが初めて出来上がった。

「ポトポトと出てくる樹液を見て、それは驚いた」と和菓子店「中村屋」(東町)3代目の中村雅夫さん(39)は思い出す。「カエデの森を育ててお菓子を作り、その森で市民が楽しむ。そんな循環を作りたい」と夢見ている。