2009年6月1日月曜日

最先端の植物工場「野菜工房」 秩父で稼働

 2009年5月21日(木)埼玉新聞を抜粋編集

 今春、秩父市みどりが丘の工業団地で遊休工場を利用した「野菜工房」が稼働した。工房といっても野菜の加工品を作っているわけではない。実は野菜工場、本物のレタスを作る会社なのだ。植物工場は全国に50カ所ほどあるが、「低細菌」「低硝酸」を前面に出した工場はほかに例がないという。野菜工房を訪ねた。

 ■空き部屋が工場

 建物は2階建て。元は電子部品会社の工場だった。静かで人の気配もないので電話すると大山敏雄社長(59)が出てきた。1階の奥の空き部屋を借りている。大手食品会社で水耕栽培の研究をしていた大山社長と、地元出身で元大手商社員の周藤一之副社長(53)が中心になって設立した。

 植物工場は2月下旬から稼働。広さは約430平方メートル。床面積を有効に使うため三段式の平棚を採用。ここで種まきから、移植、収穫までを行っている。生産能力は1日900から千株、年間45トン。現在、役員を含め六人が従事、リーフレタス、フリルアイス、サラダ菜を栽培、出荷している。

 ■光源は蛍光灯

 工場は完全制御で太陽光を完全にシャットアウト、外気もフィルターを通したものしか入れない。光源は蛍光灯で1年を通じて20度から24度になるように管理している。水耕栽培で、栄養分は必要な時に必要なだけ、霧状にして供給する。

 栽培施設に虫が入ってこないので農薬を使う必要がない。また、食品工場の衛生概念を導入して低細菌を実現、洗わずに新鮮な野菜が食べられる。周藤副社長は「家庭でのおいしさもさることながら、業務用では無駄がなく、鮮度維持、コスト、労働時間の削減など大きなメリットがある」という。さらに、必要な栄養分だけを与えているため「低硝酸の野菜ができ、えぐ味がなく甘く、子どもも嫌がらずに食べられる」とか。

 ■30数日で収穫

 種をまいてから30数日で収穫できる。すでに秩父地域のホテル、百貨店、スーパー、レストランを中心に、深谷市や都内にも出荷している。ラベルには「A(洗わず)A(甘い)A(安心野菜)」の表示がされている。

 価格は露地ものより割高だが、周藤副社長は「年間を通して同じ価格、品質で天候不順による相場に左右されない。業務用の仕入れの35%から55%の野菜は商品にならないで捨てているが、うちの場合は95%使える。決して高いものではない」と話した。大山社長は「低細菌、低硝酸を前面に出した工場はほかに例をみないもの。設備のハードとしても、栽培方法のソフトとしても最先端のものと自負している」という。