2009年6月13日土曜日

川合善明市長:目指すは、「住みやすい、住んで良かった川越」

2009 年 6 月 5 日、クオリティ埼玉を抜粋編集

 NHK連続テレビ小説「つばさ」の舞台地となり、いっそう賑わいが増した感のある川越市。2009年2月新たに就任した川合善明市長に、川越市のまちづくりについて話を聞いた。

 「川越市のまちづくりの理想像は、抽象的になりますが、“住みやすい、住んで良かった川越”です。歴史と伝統を重んじた品格を感じさせ、なおかつ、若者にとっても魅力あふれるまちというイメージですね」

 JR川越駅前のクレアモールから大正浪漫夢通り、蔵造りの町並みと続く約2.5kmの商店街は日本一の長さとも言われ、平成~昭和~大正~明治~江戸とそれぞれの時代を映した町並みが魅力だ。平日にもかかわらず、若者から高齢者まで実に見事な賑わいぶりを示している。
 
鏡山酒造跡地の活用kura
 そんな中心市街地に5月2日、新たな“顔”が誕生した。本川越駅から約150m、クレアモールと大正浪漫夢通り、蔵造りの町並み双方への起点に位置する鏡山酒造跡地の暫定活用が始まっている。
 明治、大正、昭和の各時代の酒蔵が残る鏡山酒造は2000年に廃業。現在、川越市では2010年秋を目処に地域の食文化や特産物の提供、観光情報発信などを行う施設整備事業の準備を進めているところだ。すでに改修工事は終わっているが、現在は具体的に何をやるのか構想を練っている段階。指定管理者制度を活用し、民間の活力を注入する予定という。

 「本格オープンはもう少し先になるが、“つばさ”効果を利用し、いっそうの観光客誘致を目指すとともに、訪れた人々への観光情報発信拠点として、2010年3月末まで暫定活用することとなりました」

 ちなみに埼玉りそな財団の試算によると、9月26日までの放映期間中、市内観光客は250万人増加するという。
 暫定活用では川越市観光案内所、埼玉県物産観光館川越店、小江戸川越伊佐沼農産物直売所、新富チャレンジショップ、イベントスペースに加え、現在「つばさ」展が開かれ、スタジオセットのレプリカやパネル、メイキング映像などを楽しむことができる。
 
 「今から約40年ほど前、私の高校時代、蔵造りの町並みや菓子屋横丁は寂れていました。地元の人々による“川越蔵の会”の地道な活動などが実ったことと、1990年のNHK大河ドラマ「春日局」により観光客が急増したのです」

選択と集中で、徹底した行財政改革
 まちづくりの課題はどうだろうか。
 「就任して分かったことですが、川越市は想像以上に良くない財政状況です。行財政改革は必ず成し遂げねばなりません。一つ一つの事業を見直し、不要な事業は廃止し、本当に必要なところへ重点配分するつもりです」

 選択と集中が緊急課題となっている。すでに、市立大学開学計画は白紙撤回とした。市内には私立大が4校あり、少子化の時代にあえて民間と競争する必要性は低いと判断したからだ。

 「事業の見直しの判断基準となるのは、次世代を担う子どもたちに関わる事業や多数の市民に関わる事業を優先的に実施したいと考えています」

 徹底した行財政改革を進めるため、中期財政計画を策定することになる。その第一段階として市長・副市長の給料引き下げや市の組織改正を実施するという。すでに4月の組織改正では、新斎場建設、中高一貫教育、地域緊急経済対策に関する部署を新設した。
 
 
川越駅西口に拠点施設
 今後の重点施策についてポイントを整理してみよう。「判断基準の一つは、次世代を担う子どもたちに関わる事業」と言うように、子育て支援策として、6月補正予算に待機児童の解消を目指し、保育所整備基金を提案する予定だ。また、現在ほぼ6割ほど進んでいる小中学校の耐震化完了計画を 2015年度から2012年度に前倒した。

 さらに、川越駅西口の拠点施設整備事業が本格化する。県と川越市の共同事業で、「西部地域振興ふれあい拠点施設(仮)」だ。県地方庁舎・産業支援施設・大学コンソーシアムなど県の産業支援・人材育成施設と、市民活動支援センター・ホールなど市の施設、そして民間によるにぎわい施設などが主な内容となる。今年度は事業者の選定や設計が行われる。
 

まちづくりは住民参加&ロングスパンで
 最後にまちづくりについての考え方を伺った。
 「長期間にわたる市民活動が突破口となり、蔵造り周辺の地域が活性化したことからも分かるように、良いまちづくりをするには、思い切って20~30年というロングスパンで考えることが必要ではないでしょうか。ビジョンのない開発は避けるべきです。中心市街地の周辺・郊外地域のまちづくりについても、住民参加によって各エリアに合ったまちづくりを長期計画で進めていきたいですね」