2008年12月13日土曜日

埼玉県産業観光講演会2008

2008 年 11 月 28 日 クオリティ埼玉

知的好奇心と体験欲を満足させてくれる「産業観光」の可能性

マーケティングの視点とリーダーの存在が必要
 温泉や大自然といった旧来の観光資源には乏しいが、さまざまに切り口を変えて振興策が探られている埼玉観光。その一つ、「産業観光」をテーマにした講演会が27日、埼玉県と(財)埼玉県産業文化センター、(社)埼玉県観光連盟、(社)埼玉県物産振興協会によって、大宮ソニックシティ(さいたま市)で開催された。

  「産業観光」とは、温泉、景勝地や花、祭り等旧来の観光資源ではなく、現役の工場や伝統工芸の工房、地域を支えてきた産業遺産、近代化遺産などを訪れることにより、知的好奇心を満足させる近年始まった新しい形態の観光である。秘かなブームにもなっている。

 第1部で講演したのは、淑徳大学国際コミュニケーション学部経営コミュニケーション学科の廻(めぐり)洋子教授。まず廻教授は、「観光を生かした地域振興の手法」という観点から産業観光に絞らず観光全般を概観した。観光マーケティングや観光政策を専門分野とする廻教授だけに、まず「観光振興には受容、供給の両サイドから考えることが必要。その上で、観光をトータルに考え、マーケティングの視点を導入すべき」と言う。

 次に、交通の利便性、宿泊施設、収容能力、気候、資源、イベントなどを精査した上で、観光地のコンセプトづくりとその共有の重要性を呼びかけた。さらにゴール設定→プロジェクトチーム立ち上げ→アクションプラン作成・遂行という流れだ。そこで問題となるのがマーケティング活動。成功の鍵は、 Convergence(集中)、Continuity(継続)、Coordination(連携)という3つのCだという。「観光振興に必要なのは観光をトータルで考え、さまざまなサービスを総合・統括し、管理・運営することのできるプロデュース力です。牽引するリーダーが求められます」

埼玉は「産業観光」の先進地帯となるか
 第2部では、廻教授をコーディネーターに春日部桐たんす組合の伝統工芸士・飯島勤氏、「社会科見学に行こう!」を主催する小島健一氏、(株)JTB関東で交流文化事業チームに所属する樋口誠司氏、埼玉県観光振興室の荒井康博室長をパネリストに迎え、パネルディスカッションが行われた。

 飯島氏は、工房見学の様子やアニメ「らき・すた」のモデル地として賑わう鷲宮とのコラボ企画による桐製の新製品づくりを紹介。従来とは異なる需要掘り起こしの必要性を訴えた。これに対してエコをイメージした旅の新ブランド「GREENSHOES」を企画した樋口さんは、「何回も訪れてもらわないと意味がない。例えば、家族で桐を素材に机づくりを完成するまで行う企画なんてどうだろう。今までだれもやったことがないようなことを考えてみては」。確かに「週末ものづくり」という旅行商品があっても面白そうだ。

 一方、インターネット上で人を集めて、個人では見学しずらい施設や史跡をみんなで訪ねるという「社会科見学に行こう!」を主催する小島氏は「職人さんの話、熱さは面白い。いい観光資源だと思います。秩父地方などにある鉱山も興味深い。街ぐるみで見学してみたいですね」と語る。

 荒井観光振興室長は、県が行ってきた「ものづくりスタンプラリー」の成果に加え、川口市の「ベーゴマ、鋳物工場、B級グルメタウン構想」、深谷市の「レンガ、オープンガーデン、煮ぼうとう」、行田市の「足袋蔵、ゼリーフライ」など産業観光とグルメを絡めた事例を紹介。

 廻教授は、こうした産業観光を含めするさまざまな観光情報を一元化し、旅行会社、ユーザーとの間に橋渡しする団体の必要性を強調した。行政や旅行会社などによるマッチングはすぐには難しいが、観光連盟の体制整備などが検討された。

 パネルディスカッション参加者が口を揃えたのは、首都圏4000万人を抱える埼玉の立地性と日帰り旅行の可能性。日帰り旅が増えるよう、料理の仕方を変えるだけで大きな可能性がありそうだということ。県が進める「産業観光」はその大きなテーマの一つに違いない。まずは、見学・体験ができる県内 141スポットを紹介した埼玉県観光ガイドブック『わんぱく探検隊が行く!』を参考に家族で日帰り旅を計画してみてはいかがだろう。子どもの勉強になるのはもちろん、大人にとっても興味深い「社会科見学」に違いない。