2009年8月7日(金) 埼玉新聞を抜粋編集
秩父郡市の各地に点在する句碑や歌碑など紹介したガイドブック「ちゝぶ文学散歩」(B5判、238ページ)を、長瀞町在住の元秩父鉄道社員の野口正士さん(67)が自費出版した。野口さんは「文学碑に刻まれものは、まさに秩父賛歌であり、秩父の心のふるさとの歌だと思う」と話している。
野口さんの趣味は写真。35年ほど前から、撮影の合間に出会う句碑や歌碑に関心を覚え、記録にとどめるようになった。15年ほど前から、「あまりにも多いのでライフワークにしよう」と本格的に調査を始め、5年前に150基の碑を紹介した「秩父の文学碑」を出版した。
今回は、それを基に倍以上の322基の碑を訪ね歩き、新しい碑や建立場所、作者などの内容を加筆した。碑は秩父の文人のほか、松尾芭蕉、高浜虚子、若山牧水、前田夕暮、宮沢賢治、斉藤茂吉、金子兜太といった著名人や、昭和天皇など皇室関係者のものも多い。
松尾芭蕉の句碑は秩父に14基あることを確認。そのうち7基は旧吉田町に集中している。下吉田の菊水寺(札所33番)の碑は県内最古の芭蕉句碑。句碑の建立にかかわった江戸時代の俳人・建部袋凉が、当時の和尚と親交が厚く、秩父に滞在した。野口さんは「このため吉田、小鹿野の俳句熱が高まり、俳句の遺物が多く残された」という。矢行地獅子舞の碑(秩父市山田)の取材では、現在の舞の名称「幣掛り」「花掛り」が、昔は「幣をり」「花をり」だったことが新たに分かった。
定価2500円(送料160円)。問い合わせは、野口さん(0494・66・1232)。