2010年8月22日日曜日

歴史小説『のぼうの城』で行田のまちおこし

2010年8月22日東京新聞を抜粋編集

 行田市の忍(おし)城を舞台にした和田竜さん作の歴史小説「のぼうの城」が映画化されるのに伴い、同市で観光振興とまちおこしにつなげようとする動きが官民ともに活発になってきた。

 「のぼうの城」は、戦国時代、忍城が豊臣秀吉の命を受けた石田三成の大軍に水攻めされながらついに落ちなかった史実に基づく小説。弱者が強者を退ける痛快なストーリーと、個性的で親しみやすいキャラクター設定で約四十万部を売り上げるヒットとなった。

 小説が発表された二〇〇七年十一月以降、行田市を訪れる観光客は増えている。復元した忍城と同じ敷地内にある市郷土博物館の年間入館者数は、〇七年までは年間四万人前後だったが、〇八年は四万四千七百人、昨年は五万三千四百人に。

 そこへ、犬童一心、樋口真嗣両監督の指揮、野村萬斎さん主演で映画化が動きだし、市の期待は高まる。

 市は本年度、「のぼう」での観光客誘致のため県基金を含む約七千五百万円の予算を組んだ。登場人物や足軽に扮(ふん)した十二人による「忍城おもてなし甲冑(かっちゅう)隊」を結成し、忍城内や県内外の駅、高速道サービスエリアで剣舞を披露し観光PR。映画関連イベントも検討している。

 民間では、行田商店会連合会が今月、登場人物を「忍城の精鋭(もののふ)五人衆」としたキャラクターデザインを発表。同会の事業事務局の田代正人さん(56)によると、作画を依頼したイラストレーターに「萌(も)えキャラの一歩手前で」と注文したといい、風采(ふうさい)の上がらない男として小説で描かれた主役の城代家老成田長親(ながちか)以外の城主の娘・甲斐姫や、侍大将の正木丹波守ら四人は美男美女ぞろいだ。

 田代さんは「これまで埼玉古墳や古代ハスなど観光資源がいろいろありながら、商業に結び付けられなかった。郷土の先輩を顕彰することで活性化の起爆剤になれば」と意気込む。

 気掛かりなのは、映画のロケ誘致が成功していないこと。市長を先頭に市内での撮影を映画制作会社に働き掛けてきたが、色よい返事はない。主なロケ地は北海道苫小牧市で、今月十五日から撮影が始まった。「ロケ地になると、かなりPR効果は高いのだが」と担当者は話す。映画公開は、来秋の予定。