2008年9月14日日曜日

サツマイモ文化普及へ 紅赤発見110年でDVD 川越友の会

 2008年9月14日(日)埼玉新聞を抜粋編集
 
 川越地域や千葉県など関東の一部で生産されている幻のサツマイモ「紅赤」を中心にサツマイモの由来や文化を分かりやすく解説したDVDビデオ「サツマイモ再発見~幻のいも『紅赤』一一〇年~」(約三十分編集)の上映発表会が十三日、さいたま市浦和区の市立北浦和図書館で開かれた。DVDは、サツマイモ文化の普及活動に取り組んでいる市民団体「川越いも友の会」(ベーリ・ドゥエル会長)が紅赤の発見から百十周年を記念し、暮らしの映像社(本社・川越市)とともに制作。この日は来月十三日からの限定販売(三百本、一部二千五百円)を控えて、「紅赤」発見の地の浦和市(現・さいたま市)で初の一般公開となった。

 ◇サツマイモの伝来

 友の会などによると、サツマイモの原産地は中南米。日本には十六世紀から十七世紀にかけて、中国から沖縄経由で鹿児島に伝来。一七三二年の享保の大飢饉(ききん)の際、サツマイモを栽培していた長崎と鹿児島で死者が出なかったことから、徳川吉宗がサツマイモの研究を命じたのが全国に普及するきっかけだった。

 干ばつに強く、やせた土地でも生産できることから、特に水はけが良すぎる関東ローム層の武蔵野台地で熱心に導入され、川越のサツマイモは江戸後期の焼き芋ブームに乗り、新河岸川を利用して大量に江戸に流通するなど、サツマイモの代名詞となった。

 ◇紅赤の由来

 紅赤は一八九八(明治三十一)年、木崎村針ケ谷(現・さいたま市浦和区)の山田いちさんが自分の畑から突然変異した鮮紅色のサツマイモ七株を発見。食べたところ、非常に美味だったため、試作して増やし、都内の市場に出荷。従来のサツマイモより味がよかったことから評判となり、甥の吉岡三喜蔵さんが「紅赤」と命名、各地に普及させたという。

 ◇発見者の子孫らも収録

 DVDは、二〇〇六年十月から今年八月までの約二年間を費やし関係者や関係場所を取材、撮影して編集。川越市をはじめ所沢市や入間郡三芳町のサツマイモ由来の菓子店や神社、資料館などを紹介しているほか、紅赤発見者のひ孫に当たる山田精一さん(71)や吉岡三喜蔵さんの三女ふきさんなどのインタビューも収録されている。

 冒頭、山田さんは「いちさんが発見時の株をすべて食べていたら、紅赤は世に出なかったという人もいます。今回のDVDは後世に残ると思っている」などとあいさつ。吉岡さんは「いちさんと三喜蔵さんは同じ年に亡くなっており、それから今年で七十年が経過。もし、二人がDVDの完成を知れば、大変喜んだでしょう。市内に置かれたDVDをできるだけ多くの市民に見てもらいたい」と話した。

 今年六月まで運営されていた川越市のサツマイモ資料館の元館長井上浩さんが「幻のサツマイモ『紅赤』とは」、精一さんの父親などに取材して童話「紅赤ものがたり」を創作した童話作家の青木雅子さんが「山田いちさんと吉岡三喜蔵さんらの人柄」をテーマにそれぞれ講演。その後、DVDの上映会と感想座談会が行われた。

 ビデオのナレーションも担当した鈴木浩さんは「インタビューを通して、いちさんも吉岡さんも紅赤の作り方を周囲の人たちに優しく教え、より安い値で売っており、二人が欲得なしで紅赤の普及に努めていたことが分かり、感動しました。DVDはサツマイモ文化の映像資料として利用してほしい」と話している。

 DVDの上映発表会は来月十三日、川越市菅原町の妙善寺で催される「いも供養」でも行われる。

 問い合わせは、暮らしの映像社の鈴木さん(090・7174・7402)へ。

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 川越いも友の会 1984年、川越地方のサツマイモ伝統文化を保存する市民活動とサツマイモ愛好者や研究者、業者などを結ぶ文化活動を目的に結成。シンポジウムや講演会、料理講習会などに取り組んでいるほか、サツマイモに関する小冊子を編集、発行。これまでに農村地域文化賞最優秀賞、サントリー地域文化賞、県文化ともしび賞などを受賞している。現在の会員は約40人。