2010年6月14日月曜日

『大宮古事拾遺』出版 下村克彦さん

2010年6月14日 読売新聞を抜粋編集

 さいたま市立博物館の元館長で旧大宮市育ちの下村克彦さん(65)が「大昔からちょっと昔まで」の大宮の歴史民俗にまつわる雑学を紹介する「大宮古事拾遺」(さきたま出版会)を刊行した。地図や写真を数多く収録し、歴史散歩のガイドに活用できるよう工夫されている。

 大宮古事拾遺は「大宮」の地名の由来に始まり、地元に伝わる埋蔵金や鬼婆(おにばば)の伝説、江戸時代の大宮ギャンブル事情、調理器具あれこれなど様々なテーマを取り上げ、人々の暮らしぶりを生き生きと紹介。主に2002~09年にタウン誌や市のPR誌に掲載したコラムなどを大幅に加筆訂正し、脚注も追加したもので、娘と両親の掛け合いスタイルで話が進み、気軽に読めるように仕上げてある。

 話の中心となる歴史資料には、難しい古文書や碑文だけでなく、川柳や絵草紙の挿絵なども活用。江戸時代の「死に水を嫁にとらせてなるものか」「出来るなら嫁の死に水とるつもり」という川柳を取り上げ、いつの世も変わらない嫁しゅうとめ戦争で笑わせる。

 下村さんによると、歴史や民俗研究の一番の楽しみは、石碑や古文書などの資料からイメージを膨らませ、他の資料とも結びつけて昔の文化や暮らしぶりが目の前に浮かび上がって来る瞬間にあるといい、「この本を片手に歴史散歩をして、魅力の一端を感じてもらえれば」と話している。

 下村さんが歴史や民俗に関心を持ったのは高校生の頃。自宅近くの墓地に立ち並んでいた石の塔婆が気になり、学校の図書館で調べてみたところ、中世にしか作られていなかったものと分かった。それを機に「古いもの」に熱中するようになり、大学では考古学を専攻。その後、旧大宮市教委で遺跡発掘などに携わった。

 A5判256ページ、2100円(税込み)。問い合わせは、さきたま出版会((電)048・822・1223)へ。